京都の町家で鍾馗さんの像が見られる理由
京都市内では風情のある建物が並ぶ古い町並みがあちこちに見られます。
訪れた観光客はそのいかにも古都らしい雰囲気に魅力を感じるわけですが、そんな町家の屋根の上に一見鬼にも似た小さな像が置かれているのを見かけることがあります。
これは鍾馗さん(しょうきさん)と呼ばれる中国の宗教、道教由来の神様です。
もともと疫病除けの神様として知られており、江戸時代には疫病が流行するたびにこの神様への信仰が高まりました。
神様の姿を描いた絵などが多数販売され、庶民の間で人気を博したと言われています。
京都の町並みでこの鍾馗さんの像が見られるのは京都の町並みならではの特徴と、京都人の気質が深く関わっていると言われています。
道教では悪魔や妖怪といった悪いものはまっすぐにしか進めないという考え方があります。
そのため、道のつきあたりにある家はそうした悪いものが入り込みやすいと考えられており、入ってくるのを防ぎ、跳ね返すためにこの神様の像を置くようになったというのです。
京都は道が整然とした町並みが特徴のため、まっすぐ伸びた道の突き当りの家でこの神様の像が必要とされたのでしょう。
もうひとつは道を隔てて向き合った家同士の対抗意識がかかわっているとされています。
ある家が鍾馗さんの像を屋根に置くと跳ね返された悪いものが向かいの家に入ってくると考えられるようになったのです。
ですから、向かいの家も対抗してこの神様の像を置くようになります。
それがどんどん広がっていった結果、京都市内のあちこちの町家でこの像が見られるようになったと考えられています。